幼稚園の日記(ブログ)

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  2009年5月26日 火曜日

 朝・晩はまだ肌寒いですが、日中はぽかぽかと過ごしやすい毎日が続いています。三葉幼稚園の子どもたちも、元気で活発に遊んでいます。絵の具のコーナーに行くと、うさぎ組のAちゃんが、何かぶつぶつとつぶやきながら絵を描いていました。Aちゃんに何の絵か問うと、「お父さんよ。」と答えました。「お父さんはね、目があって、鼻があってね・・・。」と、お父さんの顔を思い浮かべながら描いていました。先日、フジグランに出す『お父さんの絵』を描いたことを思い出しながら、色も何分も何分もかけて、丁寧に塗っていました。「周りには花火、そしてお姉ちゃんとAがおるんよ。」と、イメージしながら筆を動かしていきました。真剣なAちゃんを見て、「Aちゃんの頭の中には、もう完成した絵が思い描かれているんだろうなぁ。」と、思いました。また、ぱんだ組のN君も、いつものように絵の具で絵を描いていました。すると、筆からポタッと絵の具が垂れてしまいました。その瞬間、N君の動きがぴたっと止まり、何かを考えているようでした。そして、おもむろに筆を置くと、紙を両手で持って傾けて、その垂れた絵の具を流し始めました。その様子を見ていた教師は、去年『流し絵』をしたことを思い出しました。N君は、ポタッと落ちた絵の具を見て、昨年して遊んだ流し絵が瞬間的によみがえったのでしょう。子どもの体験は、きちんと頭のタンスに溜め込まれ、同じような場面で応用されて生きているのです。

 さて、一方、テラスの前では、たくさんのアリが大きなハチの死骸を運んでいました。その様子を、ぱんだ組のSちゃんが長い間じっと見つめていました。アリ達は、自分のからだの何十倍もある獲物を、頑張って巣の中に入れようとするのですが、ハチのおしりがひっかかって入りません。アリ達は、方向を変えたり、押し上げたり、ハチのからだを傾けたり、何とか穴に入れたいと試行錯誤している様子でした。なかなか入らないので、仲間を呼んできました。どれほど時間がかかったことでしょう。ずぽっと、ついにハチのからだは穴の中へ・・・。入った瞬間、「入った!!」と歓声があがりました。そして、あれだけいたたくさんのアリ達は、いつの間にかさーっと巣の中に帰っていき、みんないなくなりました。「これからみんなでごはんやね。」と言って、みんなでしばらくその巣を眺めていました。ハチは、いちごの赤ちゃんが生まれるお手伝いをする大切な役割がありました。なのに、今回はそのハチが、アリのエサとなって運ばれていました。死んだハチが、今度はアリの命となってつながっていくのです。今日もまた、命のつながりや、動物達が生きるための自然の摂理を実感しました。

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 今日は火曜日。お弁当日でした。うさぎ組のH君のお弁当の中には、かわいらしい『びわ』が3個入っていました。「お母さんがびわの歌知らないって言うから教えてあげたんよ。そしたら買ってきて食べさせてくれたの。」と、嬉しそうに話してくれました。そして、「うさぎ組のみんなにも1個あげるー。」と言って、みんなに分けてくれました。1個のびわを30等分に分けて、口に入れると、「なんだかやさしい味がするね。」と、Rちゃんがつぶやきました。

 そんな中で、大変悲しい事件が起きました。昨日の夕方、事務所横のびわが何者かにもぎとられていたのです。あんなにみんなが毎日眺めて、少しずつ色づくのを待っていたびわは、無残にも何個ももぎとられて、お部屋に転がっていました。みんなで歌ってやさしい気持ちになったびわ、びわの葉をゆすりながらまるでゆりかごで揺れているようなかわいいびわの実たち、誰もが大切に思っていたはずでした。この出来事を教師はどうとらえ、どう子どもたちと語り合えばよいのでしょうか。そんなことを考えていながら、今日、この事件のことを、私たち教師は子どもたちに伝えることができませんでした。タイミングで人として大切なことを知らせていかなければならないはずなのに、私たちは、一体いつ、どのようにこの悲しい出来事を子どもたちに伝えるつもりだったのでしょうか。副園長にそのことを報告しながら、反省するばかりでした。そして、明日は、子どもたちにこの事を伝え、みんなで考える時間を作りたいと思いました。子どもたちが帰った園庭で、教師達は悲しい思いで残されたびわに紙をかぶせ、そのびわの木の下に、もぎとられたびわの実をそっと置きました。明日登園してきた子ども達に気付かせるために・・・。そして、子ども達としっかり話し合いたいと思います。犠牲になった青いびわの実の命を無駄にしないために・・・。

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