2024年12月13日 金曜日
今週の月曜日、年中の部屋の前を古森先生が通りかかりました。嬉しそうに週末にあるお楽しみ会の話を口々にする子ども達に古森先生のいたずら心がむくむくむく…。「そうだよね~楽しみだよね!でも去年のお楽しみ会のことを覚えてる?仮園舎だったからさんさんらんどでお楽しみ会したよね。サンタさんもさんさんらんどに来てくれたんだったよね。あれ?今年も、もしかしてサンタさんがさんさんらんどに来て、だ~れもお友達がいない!って思って病児保育のお友達とぴよぴよのお友達にぜ~んぶプレゼントあげちゃうかもしれない!」と子どもたちに言いました。するとぱんだ組のRくんが「わかった!じゃあ“幼稚園はこっちですよ~こっちに来て下さ~い”って貼っておいたらいいんじゃない?」と見事に古森先生のアタックを打ち返したのです!さすが三葉っ子!!ちょうど火曜日に秀野邸の畑に玉ねぎの観察に行く予定だったので、お出かけついでにさんさんらんどにサンタさんへのお手紙を貼りに行くことにしました。
それを聞きつけた年長さんたちが、昼食後「ねぇねぇ、年中さんはサンタさんにどんなお手紙書いたの?これ私たちのお手紙なんだけど」と見せに来てくれました。さすが年長さんらしい字や絵で新園舎に来てほしいことや幼稚園への道順のような矢印を描いていました。「じゃぁ、これは私たちが預かって年長さんの分も貼っておくからね!任せてね!」と手紙を預かることにしました。
翌日の火曜日、それぞれ手紙を持って出発前に古森先生のところに行くと「わ~これは素敵!きっとサンタさんもお空から見てくれるよ。さんさんらんどにいる病児保育の吉本先生達に十分お願いしてらっしゃい。きっとみんなのお手紙を守ってくれるからね。」と教えてくれました。秀野邸に行く前にさんさんらんどに急遽行きました。突然来た子どもたちに吉本先生は驚きながらも子どもたちが「サンタさんがこっちに来たら“幼稚園の方に行って!”って言ってね!!」と必死に訴えるものですから「うん、うん。わかったよ。間違えてきたらアッチアッチ!(英語風に)カモンカモンってバイクで誘導するね」と丁寧に一人ひとりの話に耳を傾けてくれました。手紙を貼るときも子どもたちと一緒に貼ってくれて、さんさんらんどは風が強いにも関わらず今もぴったり張り付いているのは子どもたちの思いを大切に守ってくれている吉本先生達のおかげなのです。サンタさんが空から見える場所を探して、塔のてっぺんに貼ったり、濡れないようにしたりとみんな思い思いの場所に手紙を貼っていました。年長さんのお手紙の矢印の向きを幼稚園の方に向けるために逆さまに貼ろうとしていたけれど、オブジェの裏側に貼ればいいと思いついたRくんや、汽車ぽっぽのえんとつ近くに空の方に向けて貼ったらいいとアイデアを出す子もいました。りす組の普段とっても賢いけれどシャイなSくんは、「風が強いから飛んでいくかもしれない…」と不安に思い、「サンタさんのためなら!」と、ここぞとばかりにお友達が矢継ぎ早に話しかける吉本先生の元へ行き、「たえこ先生、剥がれたらまた貼っといてね!」と大きな声でお願いしていました。そんなエピソードを聞いた年少さんたちも幼稚園のあちらこちらに「ここですよ!」のお手紙を書いて貼りました。今年のお楽しみ会はこんなことをして大人も子どもも遊びながらみんな心待ちにしていたのです。
サンタさんは夜にしか来ないから…ということで今日はお部屋もホールもカーテンを締めて、カーテンの無いガラス窓には布や紙を貼って、どこもかしこもほんのり光が差し込むほどの薄暗さです。夜の準備をしていると、なぜか子どもたちは肩をすくめてひそひそ声で話し始めました。小さな声で「先生、真っ暗やね。楽しい真っ暗だ。」とつぶやきました。暗い中でも子どもたちの目はキラキラ輝いていたのが印象的でした。
ホールに上がるとお楽しみ会の始まりです。寒かったらいけない、と古森先生達が出してくれたストーブやマットのおかげでホール全体があたたかい空気でした。
まずは古森先生のお話。古森先生が「今朝ね、古森先生のマンションのベランダから遠くのお空が見えたんだけど、お山があってね、ねずみ色の雲が見えたの。その上に、白い雲があって、そのまた上にふわふわの綿みたいな真っ白い雲が見えたのよ。」と話すと、あちこちで「サンタさん?」「サンタさんがいる雲や!」とつぶやく声が聞こえました。そして続けて「運動会にこにこ頑張ったお友達いるかな?『はーい!!』じゃぁ、お外で遊ぶときに仲良しこよしで遊べたお友達は?『はーい!!』お片付けできたお友達は~?『はーい!はーい!!』それじゃぁ逆も聞いてみようかな?何か悪いことをしてしまったお友達はいるかしら…?」と問いかけると、ぱんだ組のMちゃんがおずおずと手を小さく挙げました。「お掃除ちゃんとしなかった時がある。」とぽつりつぶやくMちゃん(いつも一生懸命お掃除してくれるとってもよいこです)に古森先生が「あら、そうだったの?でもMちゃんは正直に言えたから大丈夫だよ。素直で正直なことはいいことなんだよ。」と教えてくれました。Mちゃんもほっとしたように笑いました。
「お・た・の・し・み・か・い!!はじまりはじまり~!!」の掛け声で先生たちの出し物が始まりました。まずは、ハンドベルの演奏、“ハンド”で持ってる“ベル”でハンドベル。きれいな音色のハンドベルで「きよしこの夜」を演奏してくれました。静かなメロディーに耳を澄ませてしんとした様子で聞いていました。一度幕が閉まったと思ったらアンパンマンの名犬チーズがキャンディーを持って出てきました。その後ろからドキンちゃんとバイキンマンが出て来てチーズに意地悪をし始めました。ドキンちゃんとバイキンマンは三葉幼稚園のお友達にも意地悪をしています。食パンマンもカレーパンマンも大暴れのバイキンマンとドキンちゃんには太刀打ちできません。
その間も子どもたちは「だめ~!!こらー!!きゃー!!」と大歓声!やりがいのある良いお客さんです。最後にアンパンマンが出てきたものの、ドキンちゃんは強いです。ドキンちゃんに水をかけられて力が出ないアンパンマン…そこへジャムおじさんとバタコさんが来てくれて新しい顔を取り換えてくれてアンパンマンは力を取りもどし、バイキンマンとドキンちゃんをやっつけました。そうしてみんな仲直りの演奏です。楽器紹介をしてアンパンマンメドレーの合奏をしました。プレ年少さんや急遽参加が決まったれもん組さんから年長さんまで、み~んな知っているアンパンマンの曲で子ども達が大合唱してくれました。
次は、先生たちの劇です。「サンタさんからきた手紙」は、ねずみの郵便屋さんが雪にすべって手紙を落としてしまい、その中の一通が濡れて宛名が読めなくなってしまったところから始まります。しょんぼりしながら他のお手紙を届けるねずみさんを心配して森の仲間たちが一緒に宛先を考えてくれました。
仲間のおかげで、サンタさんからねずみさんに宛てた手紙だとわかり、中をあけると、一緒にプレゼントを配ってほしいというお願いのお手紙が入っていました。劇の途中で子どもたちからの合いの手が入ります。そんな参加型の劇に夢中になって見入っていました。
劇の終わりで古森先生がみんなにおやすみなさいの声をかけてくれました。サンタさんは子どもたちが寝ている夜にしか来れないこと、ということでホールの電気も真っ暗。目をつむって静かにしていると、シャンシャンシャン…と鈴の音が聞こえてきました。だんだん鈴の音が近づいてきます。シャン、シャン、シャン…とゆっくりになったと思うと、ゴトン、ゴトンとブーツの足音がしました。目をあけるとステージにふわふわの真っ白い髪、髭、大きなおなかの真っ赤なお洋服を着たサンタさんが立っていました!
目も口もまんまるにしてサンタさんを見る様子はまるで夢のような世界でした。
サンタさんへの質問を年長の4人のお兄ちゃんお姉ちゃんがしました。サンタさんを前にちょっぴり緊張しながらも嬉しくてたまらない様子で質問しました。英語で「Merry Christmas!」とサンタさんに言われて咄嗟に「メリークリスマス!」と言い返すことができました。さすがです。
サンタさんが、さんさんらんどの上を通ったときにみんなが描いてくれた矢印やたくさんのお手紙を目印にして幼稚園まで来れたこと、みんなが準備してくれたことが本当にうれしい、ありがとう、と言っていると通訳のピーター先生が教えてくれました。その瞬間、合奏の時のまま、ステージ上のピアノにいた私に向かってぱんだ組のRくんが親指を立てて「よかったね!」と言わんばかりの笑顔でグッドのサインを送ってくれました。なんだかその瞬間あまりのかわいさに涙が出そうになりました。子ども達が純粋に信じているサンタさんの世界を大事にしたい古森先生と教師たちが一生懸命作り上げる夢の世界です。
「おやすみなさい」、でサンタさんを見送って、鈴の音が遠ざかるのを聞いた後は、それぞれお部屋に帰って待ちに待ったプレゼント探しです。今年は自分たちでプレゼントを入れる袋を作ったので“絶対にそれに入っている!”と信じる子ども達。いやいや、ふふふ…と思いながら部屋のドアを開けると、袋はぺっちゃんこ。「え!」と衝撃的な顔をする子、「おれ、さっきトイレ行きなさいって言われたときにおしっこせんかったんよ!」と泣きそうな顔で訴える子、残念そうな表情を見せる子が多い中「あ!ここにあるよ!!」とサンタさんのプレゼントの入った大きな白い袋を見つけた子が声をあげました。リボンをといて、中をあけると、あれれ?ゴミ袋・・・?英語のお手紙が入っていてそこには「あなたの素敵な幸せいっぱいの魂が詰まったバッグ(袋)を受け取りました。空に送ってくれてありがとう。サンタクロースより」と書いていました。
11月13日のブログにも書いたのですが、年長と年中でさんさんらんどにミニ遠足に行った時にゴミ袋の風船遊びをしました。ぴゅうっと強い風が吹いて一瞬で風船が空高く舞い上がり、遂に風船は戻ってこなかったのです。
その手紙を読むと「ハッ」とその光景が蘇ったようで目がきらっと輝きました。子ども達が実際に見た現実と夢のようなサンタさんの世界がつながって子どもたちの感激もひとしおです。
風船を飛ばしてしまったYくんはニコニコが止まりません!年長のKちゃんやMちゃんは、「これって本当にすごいことじゃない?風船が外国まで飛んで空まで登ってサンタさんがキャッチしたってこと?キャッチなのかな?マジックパウダーで取ったのかな?すごいすごい!」と興奮気味に話していました。
プレゼントを受け取った子どもたちが次々とテラスに出て来て空に向かってありがとうを伝えていました。どの子も本気でサンタさんが空にいると信じています。どの子の表情を見てもかわいくてかわいくて、それを見ているだけで心があたたかく、幸せな気持ちになりました。
今日、私たちは朝から“子どもの夢の世界を絶対に壊してはいけない”という緊張感をもっていましたが、あの子どもたちの顔を見るとそれが全部飛んでいく気がしました。子ども達のために全力で頑張る三葉幼稚園、子どもも大人もみんな幸せな一日でした。